第3章 城中、城下
あの後、心配そうに見つめるそよ姫に後ろ髪を引かれつつ、お城の一室に通された。たくさん(といっても10人ほどだけど)の部下の人たちは廊下で待ってもらっているらしく、部屋で私と向き合うように座っているのは、さっきの男性と、さっき歩いていた時は見つけられなかった総悟くんだった。
「あ、俺は近藤勲と言います。こっちは沖田総悟。こんなことしちゃってアレなんですけど、紗倉さんをしょぴこうとか全然そんなことないですからね!逆ですよ逆」
「逆…とは…?」
「先日、ある攘夷浪士の一団を捕縛した時にですね、その会合場所にあった資料の中に、貴方の写真と情報が入っていまして」
話を要約するとこうだった。
そよ姫と仲が良さ気な女がいる。しかも護衛もなし。こいつを人質に取れば、将軍家をどうにかできるのではないか。……そう考えた攘夷浪士のリーダーはその情報を回した。先程言った捕縛した一団の中にリーダーは含まれておらず、まだ人数もいると考えられる。そのため、私が狙われる確率は依然として高いまま____いや寧ろ、高くなってしまったのだという。
「お、俺が美和さんを守りますから……安心してください!」
「総悟くん…」
この状況に些か驚いていると、今まで静かだった総悟くんが声を上げた。お礼を言うと、照れたように頬を染める総悟くん。そしてその反対に顔を青くし、この世の終わりでも見たような顔をする近藤さん。
「総悟、お前!そんなやる気出してくれるなんて……城に着くまではかったりーとか」
「酷いですよ近藤さん。美和さんの前でそんなこと…」
なんか今、ゴリッという音がしたような。誰かの何かを踏み潰すような握りしめたような音が……なんて考えていれば、近藤さんの顔から冷や汗が垂れてとんでもない顔をしていることに気がついた。
大丈夫ですか、と尋ねるとすごい勢いで頷かれた。でも、涙目ですね。
「俺がこれから美和さんの護衛をするんでさァ。よろしくお願いします」
「あ、いや!こちらこそ!ご迷惑を」
「迷惑なんて思ってないです。寧ろ役得だなんて思って……あっ、すいやせん」
近藤さんの表情の理由は分からないけれど、総悟くんが可愛いから良しとしよう。