第3章 城中、城下
「総悟、すまねえな。護衛なんて…。あのお嬢さんに付きっきりになるだろう?女の子を屯所に置いておくわけにもいかねぇし」
「いいですよ近藤さん。確かに最初はダルいとかゴリラまじ殺すとか思ってましたけど」
「二つ目に至っては完全に悪口じゃん!…総悟はあの人……美和ちゃんか。彼女と知り合いなのか?」
「いや、数時間前に街で見たんでィ。……それで…」
「分かった!わかったぞ俺ァ!お前にもようやく春が来たということだな!!」
「違いまさァ」
____違う。恋だとか愛だとか、そんなものではない。
沖田総悟は自分に言い聞かせていた。
彼女と俺の関係というのは、街で一目見ただけという脆いものだ。一目惚れなんて馬鹿げているし、職業柄、最初の印象と人物そのものの人柄とは随分食い違っているということを、自分は分かっているというのに。
……似ていた、のだ。
そよ姫に笑いかける表情、雰囲気、仕草。決して顔や背格好が似ているわけではない。だが、どこかあの人を____”姉上”を彷彿とさせるなにかがあった。
礼儀正しく、上品なところは好感が持てる。これからも良い関係は続けていけるだろう。そう思う一方で、このまま自分と紗倉美和が一緒にいれば、いつか自分は、彼女を姉上の代わりとして見てしまう。そして自分自身を見られているわけではないと気付いた彼女は、自分の元から離れていくだろう。
俺が心から好感を持った女は、何故だろうか、俺から離れていってしまうのだ。
沖田総悟は、それを怖がっていた。
紗倉美和がそよ姫の元に戻った、数分後のことだった。