第1章 1
「あ、この匂いは……」
「じゃじゃーん! カレーだよ!」
茅野お手製カレーに目を輝かせる渚。彼女は明るく振る舞い、彼の目の前にカレーを置く。
屋上にある太陽電池のおかげで、水も電気も使える。お湯も出るため、運動部の部室に備えつけられているシャワーも使える。食堂には大量の野菜や缶詰もあった。
だから今のところ何も不自由していない。そう、何も。
よくよく考えればおかしいことなのだ。避難対策がしっかりしているというか、しすぎている。
初めからこうなることを予測していた?
学校のことは責任者に聞くのが手っ取り早い。そういう訳で金属バットを片手に、化け物どもを薙ぎ倒しながら三人は理事長室へ向かった。
そこには理事長はいなかったが、何かあるんじゃないかと引き出しやら棚の中身を引っ張り出して徹底的に調べたが、何も出てこなかった。あの男が証拠になるような物をこんな所に無用心に置いておく訳がないのだが。
何も得られぬまま、渚達は机と椅子を積み並べて作ったバリケードの向こうへと帰って来たのだった。
「ねえねえ、二人とも。肝試ししない?」
食事中の渚からの提案。
二人は顔を見合わせ、再び渚へ視線を戻した。その顔にはなんで肝試し? と書かれている。
「たまにはハラハラドキドキして楽しもうよ。ほら、夜の学校って何もないしさ。本物のお化けに会ったらちょっと怖いけど……」
「うーん、いいかもねー。購買部に何かあるかもだし」
ちら、と茅野がカルマを横目で見る。もう食料が少なくなってきているのだろうか。
いつかはバリケードの外へ出て行かなくてはいけない。いつまでもこうしちゃいられないのだから。
それにはカルマの力は必要不可欠だ。なんせ、戦闘要員が彼しかいない。磯貝がいてくれたら、カルマの負担も分担できたのだが…。