第4章 4
「改まって書くと恥ずかしいよね。僕、字が汚いし……」
「渚が道ばたで風船拾って、お手紙がついてたらどう思う?」
「びっくりするな。あと嬉しいかも」
「この人字が下手だなぁとか思う?」
「ううん、手紙だけですごく嬉しいよ?」
「でしょ?」
「そっか!」
迷いが吹っ切れたらしく、出来るだけ綺麗に書くことを心がけながら手を動かす。
自分たちの居場所と一言のメッセージに簡単な絵を記した手紙をビニール袋に入れて、膨らませた風船に糸で繋ぐ。
これで後は飛ばすだけだ。
「鳩捕まえたよー」
「早いねカルマくん」
屋上から帰って来たカルマの手には、籠に入れられた鳩が一羽いた。
手紙を鳩の足に括りつければ完成なのだが、籠を開けた瞬間に室内を飛び回った。慌てて捕まえようとすると、なかなか攻撃的で突かれながらも、なんとか目的を達成した。
再び籠に鳩を入れて、手紙付きの風船を持って屋上へ向かう。
「鳩子ちゃんも頑張ってね」
「鳩子ちゃん?」
「その子だよ。鳩錦鳩子ちゃん」
「鳩子だとそのままでつまんないから、アルノーにしようよ」
鳩子と名付けた渚に、不満そうに訴える茅野。
渚の精神が退行してしまったにつれて、茅野まで退行していないだろうか。
カルマが「アルノー・鳩錦」でどうだと妥協案を出し、二人はそれに賛成した。
「じゃ、1、2の3でいくよ? せーの」
渚がカウントダウンをして、二人が鳩と風船を飛ばす準備をする。
「1
2の
さんっ!」
同時に茅野が風船から手を離し、カルマは籠の中を開けた。
風船と一緒に飛んでいく鳩を見上げて、どうか誰かに届きますようにと願った。
生きている人間がいなくなったショッピングモールの中から、一人の少年が風船と鳩を眺めていた。