第3章 3
ガラガラとシャベルを引きずりながら長い廊下を疾駆する。
何故こんなに奴らが集まって来ているのだ?
まさか餌がここにあることをわかって、わざわざバリケードを壊してやって来たのだろうか?
それとも何かの本能?
どちらにしても大人しく食われてやるもんか。
茅野と渚がいないぶん、自分のことだけ考えていればいいので気が楽だ。
「うわっ!?」
何かに足を引っ張られ、転倒する。
死んでいたと思っていたゾンビがカルマの足首を掴んだのだ。
下半身がないゾンビは必死に這いずってカルマへ襲いかかろうとしている。
「こ、の……っ!」
掴まれていない方の足で奴の顔面に思いきり蹴りを入れ、力が緩んだ隙に立ち上がり距離をとる。
いつの間にか周りは奴らに囲まれていた。後ろは壁。逃げ場がない。
「くそ……」
疲弊した頭で作戦をたてる。
真正面の奴だけを狙って突破口を作り、あとは全力疾走して近くの空き教室で体力回復を待つ。
大体の敵を倒したら渚と茅野を迎えに行く。
よし、行くかとシャベルを構えたとき、
『下校の時刻になりました』
「えっ……!?」
カルマへじりじりとにじり寄っていたゾンビ達の動きがぴたりと止まった。
『まだ残っている生徒は速やかに下校してください』
化け物どもがのそりのそりとゆっくり放送が流れる二階へと移動して行く。
目の前の餌よりも音のする方へと移動する奴らの習性を利用した見事な誘導だった。
「カルマくん、大丈夫?」
「茅野ちゃん……助かった。ありがとう」
ゾンビと反対方向の階段からひょっこり顔を覗かせた彼女に胸をなで下ろす。
本当にどうなるかと思った。頼もしい仲間だ。彼女は。
「おーい二人ともー!」
「渚! 待っててって言ったのに!」
「ごめんごめん」
トイレにいたはずの渚も合流し、とりあえず全員無事だったことに再度安堵した。