第3章 3
「ねぇ二人とも。杉野見かけなかった?」
「杉野くん? 見てないけど」
「俺も見てないなぁ」
「そっか……。杉野、近くにいたのかな……」
先ほど持っていなかった野球バットが渚の手に握られていた。
持ち手のところに『杉野友人』と書かれており紛れもない、彼の持ち物であったことを証明していた。
しかし、ゾンビの群れの中に杉野と思わしき人物はいなかったし、彼の脚力ならばゾンビから逃げることなんて容易いだろう。
パンデミックが起きた当日、ここに彼がいたのには間違いないようだ。おそらくゾンビから逃げるために校舎へ逃げ込んだが、中も凄惨なありさまで何処か安全な場所を探しに再び外へ出てしまったといったところか。
「杉野くんなら心配しなくても大丈夫だよ! ああ見えて意外としっかりしてるんだし」
「うん。そうだね」
囲まれたりしなければ杉野ならやり過ごせるはずだ。
だが、野球バットだけここにあるのが気になる。
他に手がかりがないので、探しようがない。
「さて、肝試しはお開きにしますか。楽しかった? 二人とも」
「えっと……う、うん、まあ」
「また来年もやろうよ! 次は先輩と回りたいな」
憧れの先輩を殺してから、おかしくなった渚は二人が苦笑いしているのに気づかない。
来年、なんてあるかどうかもわからない。
明日は生きているのか死んでいるのか、それさえ見えてこないのに。
それでも自分達は生きていく。
命ある限り、抗ってみせる。
最期まで。