第8章 海常高校
笠松side
「ねっ!っち可愛いっスよね笠松先、あだっ!!」
「さっきからうるせぇよテメーは!!シバくぞ!!」
「ってー……!もうシバいてるっスよぉ!!」
一方こちらは海常サイド。
まあこんな感じで、黄瀬は入部してからずっとっちという女についてやかましかった。
だから名前だけは自分も把握していて、今日やっと顔も知る事が出来たのだが……
正直言わせてもらうと……俺もあの子は素直に可愛いと思った。
「てか聞いてくださいよ!昨日俺メール止めちゃったんスけど、その事で不安になってたみたいで……んでさっき迎えに行ったら泣きながら俺にくっ付いてきたんスよ!もう可愛くて可愛くて!」
「その口二度と開かねぇようにしてやろうか……!」
黄瀬が惚れるような女だから、てっきり着飾る女かと思っていた俺。
派手に化粧とやらをして、香水つけて、髪を明るくして。
けどという奴は全くそんな要素がなかったから驚いた。
「なんだよ至って普通の女じゃねぇか」と、ついさっきの自分はこう思ったんだけど……
(つーか直ぐ顔背けちまったんだよな)
そう……俺は超がつくほど女が大の苦手。
今までまともに会話した事ないし、写真ですら顔を直視出来ない。
って奴を見たのはほんの一瞬だったけど、その数秒でここまで印象に残ったのは自分でも凄いと思う。
それだけあの女には何か惹かれるものがあるのだろうか。
「笠松、何考え込んでるんだ?」
「な、なんでもねぇよ」
「そうか?なら俺の話を聞いてほしいんだが……」
「あ?」
「俺は今日!あの子の為に戦う!!」
いや、たとえ魅力があっても今はどうでもいい。
そう考えていると、いつの間にか近くにいた森山が指差ししながら顔を輝かせていた。
こいつは可愛い女の子が大好きで、公式戦でも同じような事を毎回言う。
その度に俺の額にはスジが入るのだが……
(げっ!誠凛もう戻ってきてたのかよ……!)
「ん?どうしたんだ笠松、今日はキレないんだな」
「そっ!そんな事ねぇよ!」
「……ほう、さては笠松もあのかわい子ちゃんに見惚、」
「ちげー!!!!!!」
どうしてだか今日は真っ先に血がのぼらなかった。
を視界に入れたせいで。