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【黒子のバスケ】ミルフィーユ【逆ハー】

第8章 海常高校





「?!」
(ちょっ……えぇっ……!)



テツヤくんのスタートダッシュに身体が疼いたのも束の間。
ボールは火神くんに渡り、彼は見事なダンクを決めた。


……のに、まさかのリング破壊で私は驚きを隠せない。

火神くんの手にはしっかりとソレが握られているし、何度瞬きをしてもそこにあるから嘘じゃない事がわかる。



(か、火神くんそれ……!)

「ああ、バキッ!っていったと思ったらこれだぜ」

「!!」
(ちょっと……!振り回したら危ないよ……!)



でもおかげで片面じゃなく全面コートを使う事になった。

準備やベンチ移動の為、一旦みんながこちらに戻ってきたんだけど……
こんな大きな物を、火神くんは指でグルグルと回し続けている。


怪我しそう。



(貸して……!指痛めちゃうよ……!)

「お、おいそれ重……」

「?!」
(きゃっ……!)



初めてリングというものを触ったのだが私には重すぎた。

よくこんなものを指一本で回せたな……と思うより先によろけた私は頑張って体勢を持ち直そうとする。


手放せばいいのに、そんな事頭にないから必死なんだけど……



「っと……」



火神くんが背中を押さえてくれたから倒れずに済んだ。

「これじゃお前が怪我すんじゃねぇか」って、私からリングを取り上げた彼はちょっと呆れたようにこっちを見てくる。



(やっぱり火神くんは優しいな……ふふっ)

「な、何笑ってんだよ」

(火神くん、)



〝ありがとう〟



この人の優しさが嬉しくて……私は口を動かして彼にお礼を言った。
感情の高ぶり以外でそうしたのは初めて。


すると火神くんはポッと頬を赤く染めて、首に手を回しながら「それ反則だろ……」と呟く。


何が反則なのかは全然わからない。
でも照れてる事はわかるから、それが可愛くて思わず微笑んでしまう私。



「んな顔すんな……!」

「??」
(どうして……?)

「かっ……!」

(か……?)

「っ……なんでもねぇ!再開すっから行くぞ!」



と、ズカズカと歩いていく火神くん。

彼が振り返る事はないだろうけど……私はそれでも構わないから、その背中に向かってまたこう言わせてほしい。



(本当にありがとう……)



と……。


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