第8章 海常高校
黒子side
〝火神くんもさんの事を……〟という僕の読みはやはり当たっていた。
前からそうじゃないかなと思っていたから驚きはしなかったけど……いざハッキリと言いきられてしまうと心中穏やかではいられない。
「な、なんだよ黙りやがって」
「……いえ」
「お前はいいだろ、付き合いなげーんだし」
「さんに長い短いは関係ありません」
そうだ。
彼女と一緒にいた時間が多かったからこそわかるのは、いくら付き合いが長くても全く振り向いてくれない事。
これまで僕がどれだけ唇を噛んで、どれだけ苦い思いをしてきたかなんて……火神くんには何もわからないだろう。
「は?」
「それより早く着替えましょう」
「はぐらかすなっつの!!ったく……」
もういっそ黄瀬くんのように言ってしまおうかと、何度も考えては首を横に振ってきた僕。
でもこんな事を続けていて思うのは、なら自分はいつ告白するんだろうという事。
さんが自分に好意を持ってるとわかったらだろうか。
(待って……!)
「お前もっと警戒心強くしろよ!!」
「?!」
(な、なにいきなり……)
「ったく……!」
けどそんなの実際わかるだろうか。
いくら自分が人の観察をするからって、心の奥にまで踏み込む事は出来ない。
となると、やはり早めに伝えておくべきかなと考える。
自分じゃない誰かにさんが想いを寄せた後では遅いから。
【じゃあ私とカントクは部屋の外で待ってるね】
「さん」
「??」
(なぁに?)
「この後の練習試合、僕の事をみていてもらえませんか」
(えっ……?)
「かっこいいところを見せますから」
そうなる前に……誰かがさんの心に居座る前に、自分ももう少し攻めていこう。
って思ったから、今のセリフを生まれて初めて言ってみたけど結構恥ずかしい。
「ではまた後で」
自分で言っといて照れてるなんてバレたくない。
だから僕は直ぐに背を向けて更衣室へと入った。
中では既にみんな着替え始めていて、自分も早く準備しなければならないのだが……その前に僕は閉めたドアの向こうに居るさんに向けて、
「必ず見せます」
と呟いた。