第2章 紙とペン
(うっ……き、緊張してきた……)
それっきり振り返る事なく前に進み続けた眉毛くん。
でもいつまた話しかけられるかわからなかったから、私は常に警戒モードだった。
だから余計に心労が溜まり、バスケ部の受付に到着したら緊張までしてきて目が回る。
「バスケ部ってここか?」
「うわっ!……う、うん」
「おい着いたぞ」
(わかってるよ……!そこに男子バスケ部って書いてあるもん……)
とりあえずドカッと勢いよく椅子に座る眉毛くんの隣に座らせてもらい、名前と志望動機をなるべく落ち着いて書いていく私。
あまり良くない事だが横目で盗み見ると、彼の名前は火神大我だということがわかった。
しかも1B。
まさかの同クラであった。
(同じクラス……?!ああもう頭が追いつかない……とにかくアレも一緒に出さないと……)
アレとは自分の病気について書いた手紙。
小さい頃喉の病気で声を失ってしまった事を、正直に語ったものである。
それを入部届と一緒に女の先輩に渡して、そのままお辞儀して帰る予定。
だったのに……
「ええっ!あなた帝光だったの?!」
「!!」
(やっぱそこ突っ込まれるよね……)
選手ではなく、元帝光中バスケ部のマネージャーだっただけなのに見事に捕まってしまった。
「練習とかどんな感じなの?!」
「マネージャーも大変?!」
「指導者は何人くらいいるの?!」
と、質問攻め。
直ぐに答えられない私はただ頷く事しか出来なくて、なんとか落ち着いてもらってから紙に書こうとした。
でも様子がおかしい事に女の人も気付いたらしく「どうしたの……?」と聞かれてしまう。
(あの……それ……)
先ずは手紙を読んでほしい。
そう意味を込めて、私は手紙を指差した。
どうか受け入れて……。
ずっとそう祈りながら、先輩が読み終わるまでの時間を過ごしたけど……
ほんの1分くらいなのに……私にはとても長く感じた。