第2章 紙とペン
「おい」
それから話が変わってカントクの所へ行こうとなっていた時……いきなり頭上から低い声が混ざってきた。
聞こえた方に目を向けても、私の身長では前開きになっている学ランと中のシャツしか見えない。
「おい」と言う雰囲気がなんか怖くて、顔までは確認しなくていいやと思ったけど……
「あんたらバスケ部か?入りてぇんだけど」
という一言で考えは変わった。
もし私が入部出来たら、この人とも一緒に過ごす事になる。
だったら見ておかないとと思って、私は目線をずっと上にあげた。
(やっ……!やっぱり怖い人……!)
かなりの身長差があって、自分が下から見上げているせいもあるかもしれないが……その人からはなんとも言えないオーラが漂い、そしてやはり声の低さと同じく怖さを感じた。
なのに……
(あっ……眉毛……)
どういうわけか眉毛が二つに枝分かれしている。
そしてそれをずっと目で捉える私。
見れば見るほど、何故?という疑問が徐々に恐怖を上回っていく。
だから私はいつの間にか彼をジッと見つめてしまっていた。
初対面で失礼だけど……。
「……んだよ」
「!!」
(しまった見すぎた……)
「この子も入部希望者なんだ!だから二人一緒に……」
「ならあんた案内してくれよ」
「……えっ?」
この時小金井先輩が間に入ってくれたのは本当に助かったけど……何故か眉毛くんが先輩を持ち上げてさっさと行ってしまう。
それを見てどうしていいかわからない私はただ立ち尽くすだけ。
すると伊月先輩が小さく「ついていけば大丈夫」と言ってくれた。
眉毛くんに付いていくのにはちょっと躊躇ったけど……少し距離を保ちながら一緒に行く事にする。
(うわあ……)
自分の前を歩く彼の背中は流石男の子。
とても広くて大きく見えた。
「なんでついて来んだよ」
「!!」
(いきなり振り返らないで……!)
「だからその子も入部希望者だってばー……」
「ああ……そういや言ってたな」
しかし眉毛くんに担がれている小金井先輩は……今は小さく見える。