第8章 海常高校
黄瀬side
「えっ、ちょっ!っち?!」
やっぱり衝動を抑えきれなかった俺。
っちを見るとどうしても身体が反応してしまう。
だが今回最初に驚いたのは……彼女の方からこっちに近寄ってくれた事。
「もしかしてやっと想いが……!」と一瞬思ったけど……次には泣かれてビックリした。
けど何故涙を浮かべているのだろう。
よくわからない。
「どうしたんスか……?どっか痛い……?」
「っ……」
(ううんっ……)
終いには俺の胸に顔を埋めるっち。
着ているシャツには涙のシミが広がっていく。
頭を撫でてあげたけど、俺の服を掴んでる手の力が強くなるだけで……愛しいこの子は何も訴えてこない。
「っち、顔上げて?」
「っ……」
「ほら……何か思ってほしいっス」
「っ……」
(不安だった……っ)
どうして不安?
そう思ったのが正直なところ。
心当たりがあるとすれば昨晩のメールの件しか思い浮かばないけど……それで果たしてっちがここまで不安になるだろうか。
「どうしてっスか?教えて……?」
「っ……」
(あのねっ……)
【返事がなかったから……具合悪いのかなとか、嫌われちゃったのかなとか……色々考えてたの……】
(うわっ……やべぇ可愛すぎっスわ……)
たった1通のメール。
それを送らなかっただけなのに……結果こうなるなんて想像もしてなかった。
よく見ると少し目の下にクマがあるから、夜あまり寝れなかったんだなとわかる。
そこまで自分の事を考えていてくれたらしい。
「ごめんっち。昨日は……」
(な……何っ……)
「昨日は……早めに寝ちゃっただけなんスよ」
(っ……そうなの……?)
「そうっス。俺がっちを嫌いになるわけないじゃないっスか」
(うん……っ)
身を屈めて視線を合わすと、今度は安心したのかまた瞳が揺れ始めてしまったっち。
泣かせてごめんという意味を込めて……俺は溢れてしまった分の涙を拭き取った。
すると……
(……へへっ)
っちが照れくさそうに笑ってくれた。
まるで天使のようで、これだけで俺は頑張れる。
違う学校だけど、なんだか負ける気がしない。