第7章 練習試合前日
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(ふぅ……やっと一息つけた……)
その日の夜。
帰宅してから私は今まで、明日の練習試合について色々データをまとめていた。
きっと出てくるのはレギュラー陣。
去年の試合をビデオでチェックしたりして、自分なりに書き出していたのだ。
(けど……まだ問題が残ってる……)
そのノートは明日見せるとして、この後しなきゃならない事を考えるとちょっと憂鬱だ。
今日1日頻繁に鳴っていたスマホ。
相手は誰だかわかってる。
そう、涼太くんだ。
(でもちゃんと言っておかないと……また恥ずかしい思いをする事になる……)
最後に返信したのは練習前で、それから来る事はあっても返してなかったから結構溜まっている。
明日楽しみっスわ!
早く会いたいっス!
また一緒に帰ろう!予約っス!
しかも練習試合には全く関係ない内容ばかり。
これじゃ抱きつく気満々だと捉えてしまう。
(よし……返信するぞ……)
[遅くなってごめんね。ちょっと話があるんだけど……]
いきなり本題を送りつける事が出来なかった私。
何時間ぶりの返信だし、これくらいが無難かな?と思った。
今の時間はもう家にいるはずだから、直ぐ返ってくるだろう。
練習でもない限り、涼太くんが遅くに返事をくれる事はない。
「!!」
(やっぱり早い……)
案の定秒単位で返ってきた涼太くんからの言葉。
開いてみるとそこには[っちー!待ってたっスよー!]の文字が。
話があるのに完全スルーされてちょっと呆れてしまったけど、ここはこちらもスルーして打ち返すしかない。
[あのね……?明日は練習試合で行くんだから、なるべく抱きつかないでほしいの……]
だが言葉の選択を間違ってしまった。
どうして私は[なるべく]なんて打ってしまったんだろう。
ちゃんと言えたら良かったのに……きっと私はなんだかんだ涼太くんに悲しい思いをさせたくないと思ってるんだ。
自分が彼を追い詰めてるとも知らずに。