第7章 練習試合前日
黒子side
「だから!ぶん殴るっつってんだよ!」
「暴力は反対です」
「ボール投げていいですかって言ったのはどこのどいつだよ……!!」
黄瀬くんがやって来た日から、火神くんはずっと不機嫌である。
ぶん殴るとかぶっ飛ばすとか……何かと物騒な事ばかり言うから少し目が離せない。
「僕ですけど」
「いや知ってるよ!!」
「なら聞かないでください」
「テメェ……!」
怒りの元は黄瀬くん。
それとさんだろうなと僕は思う。
火神くんは独り言のつもりだったんだろうけど……
「ったくにくっ付きやがって」
「頬にキッ……キスとか人前でしねぇよ普通!」
と言っていたのを僕は聞いてしまった。
というか声が抑えきれてなかったから耳に届いても仕方がない。
「とにかく明日はあくまで練習試合です」
「あったりめぇだ!!ベタベタした時には……」
と、指の関節を鳴らす火神くんからは近寄りがたい空気が漂っている。
キセキの世代というだけでも十分なのに、さんが絡んできた事によってかなりの敵意を持ってしまったようだ。
顔には常に筋が浮かび上がっている。
「落ち着いてください」
「ぐおっ!!」
「手を上げたら僕が火神くんを殴りますよ」
「もうやってんじゃねぇか……!!」
という事は、きっと火神くんはさんに惹かれ始めているのだろう。
じゃなければこんなに怒らない。
さんには不思議な魅力があるし、とても素敵な女性だ。
だから恋心を抱いてもおかしくはない。
寧ろ納得できるくらいだ。
けど……
(困りました……)
また1人ライバルが増えては、流石の僕でも焦ってしまう。
ましてや同じ高校、同じクラス、同じ部活。
それは僕だけじゃない……火神くんにも当てはまるから尚更だ。
関わる機会が多ければ多いほど、惹かれていく早さは上がっていくだろう。
「なんだよ急におとなしくなりやがって」
「……なんでもありません」
火神くんが黄瀬くんにより強い敵意を持っているなら……
僕は火神くんに対して敵意を持ってしまうかもしれない。
嫉妬はあまりしないようにと思ったけど……
うまく感情をコントロール出来るか不安だ。