第2章 紙とペン
「おお!キミもしかして俺の今のネタ、メモしてる?」
「??」
(ネタ……?)
「ほら!バスケットだけに助っ人募集中ってやつ」
(違います……!)
なんだか嬉しそうな表情を浮かべる先輩に首を振った私は、書き終わった〝言葉〟を目の前に差し出した。
「マネージャーとして……」と、読みながら内容を把握した先輩はまた更に顔を輝かせる。
横にいた他の先輩も同じく笑顔だ。
この様子だと入部出来そうだけど……自分の病気を知ったら断られるかもしれない。
まだまだ不安は残る。
「なら案内してあげるよ。あ、俺は伊月。伊月俊」
「俺小金井慎二!で、こっちが水戸部凛之助!」
(あっ……私も自己紹介しないと……)
【私はです】
けど他にコミュニケーションの取り方がない。
だから私はペン先を走らせて紙を見せる。
するとやはり相手は首を傾げ、決まってこういう質問をしてくるのだ。
「どうして書いたりするの?」と。
「っ……」
(どうしよう……もう言わなきゃダメかな……)
「ねぇねぇどうして?!」
「やめろよコガ。てか察してあげろよ」
「えっ?」
伊月と名乗った先輩は……どうやら何かを感じ取ってくれたらしい。
「無理には聞かないから。ごめんな」と、私に優しい笑顔を向けてくれる。
そして無理に聞こうとしてきた小金井先輩もまた、水戸部先輩に肩を叩かれ……今この場の空気を察してくれたようだ。
(とりあえずよかった……)
って安心する私だけど……この病気の事は、いつかは打ち明けなきゃいけない大事な話だ。
でも今日は入部届を出す時だけ言うつもりでいたから、いきなり聞かれて頭が追いつかなかった。
……けれどそれだけじゃない。
この事を告白するのには……私からしたらもの凄く勇気がいる。
もしかしたら拒絶されてしまうかもしれないから、怖くてたまらないんだ。