第6章 キセキの世代・黄瀬涼太
黄瀬side
自分の感情を俺は隠してたつもりだった。
本当はキスしたいのに、頑固拒否するっちを見てると辛くてたまらなくなるから。
それにちゃんと〝彼女は本気の相手としかしない〟って理解してるから……っちが首を横に振る限り、自分はまだ男として見てもらえてないとわかってしまう。
「今人少ないし、手くらい大丈夫っスよ!」
(もう……っ)
【恥ずかしいからやだ……】
俺のっちに対する想いは誰よりも強い。
なのに一向に届かないのは……この気持ちが重すぎるからだろうか。
でもだからといって抑える事は出来ない。
溢れて溢れて仕方がない。
狂いそうになるくらい大好きなんだ、っちの事が。
「ほっぺ赤いっスよ。可愛い」
「?!」
(や、やめてよ本当に……っ)
「っちに嘘は言わねぇっスよ」
でもこのまま俺の事を受け入れてもらえないなら……そんな簡単に赤くならないでほしい。
期待してしまうから、俺の前で赤くならないでほしい。
その照れた顔がどれだけ可愛くて、俺を煽ってくるかなんて……この子は何も知らないで見せてくる。
苦しくて苦しくて……俺がっちの見えない所で拳を握るのは、これで何回目だろう。
【もっと可愛い子……涼太くんの周りには沢山いるでしょ……?】
「そうでもないっスよ、っちが1番っス!」
(そ、それは言い過ぎだよ……)
少しでいいお願いだから……もっと俺を見てほしい。
いきなり全てをわかってほしいとは言わない、ほんの1ミリでいいから振り返ってほしい。
可愛いったら可愛い。
1番ったら1番。
また恥ずかしい思いをさせるかもしれないけど、キミにはほんの少しだけ我慢してほしい事がある。
「……ねぇ」
それは……ごめん、今だけ手を握らせて。
キミの背中を壁につけさせて。
話があるから……どうかその間だけは俺を視界いっぱいに見て。
他に視線を移さなくていい。
その可愛い顔を俺だけに向けてて。
「?!」
(こ、この体勢ってもしかして……っ)
変な事はしないと約束する。
ただ言いたい事があるだけ。
大丈夫、直ぐ終わるから……
(涼太くんっ……)
そんな不安そうな顔しないで……。