第6章 キセキの世代・黄瀬涼太
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そして練習後。
「じゃあ俺待ってるっス!」って体育館から居なくなった涼太くんだけど、まさか本当に私を待っていたなんて思っていなかった。
だから今日も、テツヤくん達と一緒に帰ろうと並んで歩いてたのに……
「っちぃー!!!!」
「?!?!」
(ひゃぁ……!!)
物陰からいきなり飛びついてきた涼太くんのせいで心臓が止まったかと思った。
キラキラと嬉しそうな顔をする涼太くんに対して、テツヤくんと火神くんからは黒いオーラが見える。
これでは助けを求めるにも求めにくい。
(涼太くん本当に待ってたの……?!)
「っち早く帰ろう!」
(で、でも私あの2人と……)
「大丈夫!ちゃんと送るっスよ!」
しかも会話が噛み合わない。
こっちはOKしてないのに……彼は私をお姫様抱っこ状態にしたままテツヤくん達から離れていく。
それだけでも恥ずかしい。顔から火が出そう。
涼太くんと2人きりになったら一体何をされてしまうんだろうか。
(やだっ……!とにかく降ろして涼太くん……っ)
「いやー久しぶりっスね一緒に帰るの!」
(もう……全然感じ取ってくれないよぉ……)
もしかしたらほっぺにキス以上の事をされるかもしれない。
私は本当に好きな人としかしたくないから、もし顔が近付いてきたら全力で断るつもりでいる。
けど好きな人としかしたくないというのは涼太くんも知ってるのに、たまに「ここにキスしていいっスか?」って、真剣な顔付きで唇に触れてくるから怖い。
(涼太くん……!涼太くんってば……!)
「ん?どうしたんスか?」
【降ろして……っ】
「えー」
(えーじゃないよぉ……)
「冗談っスよ、降ろしてあげる」
と言っても実際に口にされた事はない。
いつもいつも「大丈夫、しないっスよ」って、私に辛そうな笑顔を見せる。
そんな顔されるとこっちも悪いなと思う私。
だから(ごめんね……)と謝ってしまうんだ。
(よかった……降ろしてくれて……)
「じゃあ代わりに手!繋がねぇっスか?」
「?!」
(つ、繋がないよっ……!)