第6章 キセキの世代・黄瀬涼太
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(もしかして……かっ、壁ドン……)
いやもしかしてではない、大正解だ。
どうしてこんな状況になっているのか全然わからないけど、今まさに私は涼太くんに壁ドンされている。
触れている彼の手と絡まる指が熱い。
だがこれだけなら私は直ぐに抵抗していただろう。
でも……動けなかった。
涼太くんがあまりにも真剣に見つめてくるから。
「っ……」
(ど……どうしたの……?)
「俺さっきも言ったっスよ。っちに嘘はつかないって」
(う、うん……)
「俺がお前に本気だって……そこから先ず信じてくれねぇっスか?」
と言われても、彼が私の事好きだと言うのは知っている。
ちゃんと「好き」「付き合って」って言われたからわかってる。
だから信じてないわけじゃないのに……どうして涼太くんはこんな事口にしたんだろう。
わからなくて反応できない。
「ははっ……俺とんでもなく難しい相手を好きになっちゃったっスわ……」
「??」
(こ、声がこもってて聞き取れないよ……)
「っち」
「??」
(え……なぁに……?)
「っ!その顔ヤバすぎっス……やべどうしよ……っ」
その顔とはどんな顔だろう。
ちょっと気になるけど、それよりも涼太くんが顔を赤くしていて驚いた。
普段笑っている事が多くてあまり頬を染めない彼。
なのに今は片手で口元を隠しながら目の前に立ってる。
これが……私が初めて見る涼太くんの照れた表情。
なんだか可愛くて……私はクスッと笑ってしまった。
「なっ!何笑ってるんスか!」
(ふふっ……!)
「っ……と、とにかく!俺から出る言葉に嘘はないから……!だから!えーっと……!」
なんだか雰囲気を壊してしまった気がするけど、涼太くんの新たな一面を見れて良かったと思う。
いつも自分ばかりが照れてるわけじゃない。
涼太くんも同じ思いをする時があるんだとわかって嬉しくなる。
だからか、この後勢い任せに抱きしめてきた涼太くんを……私は拒否しなかった。
「じゃあ帰ろうっち!はい、手!」
「?!」
(そ、それは出来ないよ……)
「なんでなんスかぁ!」
「っ……!」
(だって……やっぱ恥ずかしいもん……っ)
第5章◆キセキの世代・黄瀬涼太【終】