第5章 「日本一にします」
「!!」
(ねぇ火神くん、これ見て)
なら月曜持って行くしかないと、カントクのクラスを離れた私と火神くん。
1Bに戻る途中、私は図書室前の掲示板に貼られた1枚の新聞記事を見つけて、火神くんの制服を軽く引っ張り呼び止めた。
ネットで調べていたから自分は知っていたけど……彼はそうじゃなさそうだ。
「ん?なんだそれ……〝男子バスケ部新人戦関東大会出場〟?へー、ここのバスケ部って結構すげぇのか?」
(やっぱり知らないんだ……)
「知らないみたいですね」
「どあっっっ!!黒子っ!!」
「?!?!」
(テッ、テツヤくんっ!!!!)
これには流石の私でもビックリ。
薄さに慣れてはいても、後ろからいきなり喋られたら気付きようがない。
だから私も……身体をビクつかせて驚いた火神くんと同じリアクションをとってしまった。
「テメェ普通に出ろ!意表をつくな!!!!」
「!!」
(か、火神くん!ここで大声を出すのは……!)
「シーッ」
テツヤくん、人差し指を口に当てて火神くんを注意。
だが気に食わなかったんだろう、火神くんが急にテツヤくんの頭を握り潰しにかかった。
握力強そうだし、手も大きいから……テツヤくんの頭が本当に潰されそうで見ていられない。
でも止めなければ。
(ちょっと火神くん……!)
「んだよ!!!!」
「シーッ」
「またテメェ……!!」
「!!」
(ダメだってば!!ねっ?)
火神くんは……感情を表に出しやすいタイプだと思う。
彼の事を何も知らずにここに居たら、きっともの凄く怖いと感じていただろう。
でも本当は優しいって知っているから……もう怖くない。
その証拠に、私は今ちゃんと目を見て向かい合えてる。
「……わかったよ」
(よかった……)
「つか黒子に聞きたい事があんだよ、ちょっと退け」
(あ、うん……)
と、折角怒りが静まったと思ったのに……
火神くんがテツヤくんに何を聞きたかったのかはわからないけど、肝心のテツヤくんが消えて居なくなってしまっていたものだから……また彼の血が頭に上ってしまった。
さっきみたいに怒鳴りはしなかったけど……
「黒子の野郎……」
「!!」
(ちょっ……それ手すり……?!)
階段の手すりが無残な姿で、彼の手の中にあった。