第5章 「日本一にします」
「いやそう言われても、お前はまだ出れないよ」
「なっ?!」
しかし先輩から出た言葉はこれだ。
私も火神くんも、どうして出れないのか全然わからない。
「なんでなんっ……でっ……すか主将!!」
「俺の何がダメなんだっ……ですか!!」
と、疑問を投げかける火神くんの隣で相槌をうつ私。
すると先輩が、私達がまだ仮入部だという事を改めて教えてくれて……
やっと納得する事が出来た。
(そ、そうだった忘れてたよ……)
「仮入っ……!なら本入部はどうやって!!」
「ああ、それならカントクが、」
「カントクうううう!!!!」
「?!」
(ええっ?!また走るの……?!)
もう私なんて目に入らないんだろう。
1人で突っ走って行ってしまった火神くんの背中を、ため息をつきながら見ていた私に……日向先輩は「大変だな」と声をかけた。
こちらはただ苦笑するしかない。
体力はまだ戻ってないし、日向先輩にカントクのクラスを聞いたらそう遠くない事がわかったから、自分はゆっくり歩いて行く事にした。
「よう、遅かったな」
「……」
(火神くんが走るからでしょ……)
「ほら、お前の分の本入部届。貰っといてやったぜ」
「!!」
(あ、ありがとう)
自分なんて目に入らないんだろうなんて言ってごめんなさい。
貴方はちゃんと私の存在を覚えててくれた。
だから今手元に本入部届がある。
他の部活にするつもりはこれっぽっちもないから、このまま書いて提出してしまおう。
そう思って愛用のペンを取り出すと……火神くんが何かを思い出したようにこう言ってきた。
「ああ、それ受け付けんのは月曜朝8時40分の屋上でらしい」
「??」
(え?い、今じゃダメなんだ……)
どうやら直ぐには受け取ってもらえないようだ。
この時は、提出日が決まっているのかな?程度にしか考えてなかったけど、火神くんから聞いた〝月曜朝8時40分〟になった時……私は真実を知る事になる。