第5章 「日本一にします」
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【ちょっと待ってよ火神くん!】
(走るの速すぎだよ……!)
「んなもん見せながら走るならもっと足動かせよ!」
(えぇっ……!)
学校に着いて直ぐの事。
あの後一緒に登校したけど、その時に「早く試合やらせてくれないか頼んでみようぜ」と火神くんが言ったから、今2人で主将の日向先輩を探しているところだ。
やりたくてたまらないのは十分わかるけど……そんなに走らなくてもいいのに。
(あっ……!いた!日向先輩!えーっと紙紙……!)
「主将ー!!」
「!!」
(ちょっと待って火神くん……!書かせて!)
私が先に見つけてしまったばかりに火神くんへ伝えるのが遅くて……彼はどんどん先輩から離れて行ってしまう。
急いでメモ帳へとペン先を滑らせ、今ある体力を全部出し切るつもりで私は後を追いかけた。
が、それでも火神くんの方が速い。
これでは到底追いつけない……。
(ど、どうしようっ……!)
「おい!!どうした?!」
「!!」
(あ!日向先輩!)
ドタバタしていたからか、自分達に気付いてくれた日向先輩が私の隣まで走ってきてくれた。
何故か書いて説明してる暇もないと脳が勝手に判断して、私は必死にジェスチャーで火神くんを呼び止めてほしいと先輩にお願いをする。
「あいつを呼べばいいんだな?よし。かぁーがぁーみぃー!!」
「うおっ?!」
「!!」
(先輩うるさいっ……!)
直ぐ側で叫ばれては耳が痛い。
でもおかげで火神くんがやっとこちらに気付いてくれた。
風を切るように走って戻ってきた彼は真っ先に「試合やらせろっ……あ、いや……や、やらせろください!」と、訳のわからない敬語を使って先輩に頼んだ。
ちょっと……いや、結構笑える。
(ふふっ!)
「何笑ってんだよ!!」
(だって今の……!!)
「っ……慣れてねぇんだよ!」