第4章 幻の6人目
side
テツヤくんが悲しそうに笑ったのを……私は見逃していなかった。
その笑みが彼自身に向けられたものだと知らない私は益々申し訳なく思う。
テツヤくんにそんな顔をさせてしまうほど、私は悪い事をしていたようだ。
(ご、ごめんね……)
「いえ、大丈夫です」
「……??」
(でも今……)
「さんは悪くないです。だから気にしないでください」
何かを我慢しているようにも見える彼の目。
テツヤくんは普段あまり表情を変えないから、結局のところ真実はわからないけど……大丈夫だと本人が言うなら、私はそれを信じよう。
そう決めた私は目の前のバニラシェイクを手に取って、そっと口へと運んだ。
「……また居んのかよ」
「?!」
(か、火神くん……!)
冷たいシェイクが喉を通った時、またもや同じ店に火神くんが現れた。
昨日と同じくトレイには山盛りのハンバーガー。
……見ただけで満腹を感じる。
いやそれどころか胃もたれまでしてきた。
「ってお前まで居んのかよ!」
「……悪いですか」
「しかも俺またここ座ってるし……」
「ったく……」と少しイライラした様子でハンバーガーを食べる火神くんを……私は見ていられなかった。
ちょっとでも視界に入れたら吐きそう。
よくそんなに食べられるなと感心はするけど……食が細い私からしたら、眺めるだけでお腹が苦しくなる光景。
けど食欲旺盛なのは男の子らしい。
逆に火神くんが少食だったら違和感ありまくりだろう。
「大丈夫ですか?さん」
「??」
(え、どうして……?)
「……顔色悪りぃぞ」
でも私、前はよく食べていた方だと思う。
ごはんは必ずお代わりしてたし、おかずも沢山食べられてた。
だけどそれは小学校中学年までの話。
5年生になって病気に気付いた時にはもう手遅れで、手術によって声帯を失ってしまったし……食道も狭くなった。
食べたいけどうまく食べられない、飲み込めない。
昔はそんな状態だった。