第4章 幻の6人目
黒子side
そして場所は変わり、今はマジバーガー。
今日はさんから僕を誘ってくれた。
こんな風に……。
「っ……」
(ねぇ、テツヤくん……)
【今日もマジバーガー寄っていかない……?】
僕の制服をチョンと掴んだと思ったら……視界いっぱいに見えるようにメモ帳を近付けてきたさん。
それがまた可愛くて、席に座ってからずっと僕の頭の中はこればっかり。
ほんのりだけど頬が赤かったのが少し見えたから……きっと誘うにも緊張したんだろう。
「っ……」
(えっと……どう切り出したらいいかな……)
そして今度はもじもじしている。
座る場所を確保した後、直ぐにメモ帳を取り出して何かを書いていたけど……僕にまだ見せられないようだ。
今回何を言いたいのかは流石に読み取れない。
だからさんが見せてくれるまで待っているけど……時間だけが過ぎていくばかりだ。
「……」
(えっと……)
「何かあったんですか?」
「?!」
(ひゃっ!ど、どうしよう……)
「言ってみてください」
(うぅ……もう見せちゃおう……!)
さっきの勢いある見せ方ではなく、遠慮がちにメモ帳をテーブルに置いたさんは(ごめんなさい……!)と言いながら頭を下げた。
文字となった彼女からの言葉にも同じ事が書いてある。
【昨日はごめんなさい】
さんは一体何に対して謝っているのだろう。
記憶を辿っても答えがわからない僕は首を傾げる事しか出来ない。
【昨日の帰り、私怒らせちゃったよね……】
けど〝昨日の帰り〟というヒントのお陰で理解できた。
さんが【火神くんと方向一緒だから大丈夫だよ】って言うからちょっとふて腐れただけなのに、彼女はとても悪い事をしてしまったと思っているようだ。
(気にしていたんですね……)
あの時……1秒でも長くさんと一緒にいたかったから、本当は僕が送ってあげたかった。
でもそれが叶わなかったから……少しムッとしただけ。
自分じゃなくて火神くんが選ばれてしまった事にムッとしただけ。
あれはさんのせいじゃない。
全て自分自身の問題だ……。
(僕もまだまだですね……)