第4章 幻の6人目
「……ちょっと傷付きました」
「?!」
(きゃぁ!!)
突然間近で聞こえたテツヤくんの声。
ビックリし過ぎた私の心臓はもう止まるかと思った。
咄嗟に紙を隠したけど時既に遅し、意味はない。
彼は不満そうに頬を掻きながら私を見つめてくる。
「やはりさんは手強いですね」
「??」
(て、手強い……?)
「いえ、こっちの話です。試合終わりましたよ」
「?!」
(えっ?!うそ……)
彼が言った〝手強い〟の意味は謎だが、周りを見てみれば既に試合終了していて、みんな汗を拭いているところだった。
結果は38対37で1年チームの勝利。
1点差だけど、これはきっとテツヤくんのお陰で勝てたんだろうなと思った。
だって彼のパスが通ると、みんな気持ちよくプレー出来るって昔から見てきて知っているから。
(お疲れ様……!)
「ありがとうございます。今日はこれで終わりみたいですよ」
(あ……うん、そうだね)
「また一緒に帰りませんか?」
えぇっ?!と再び鼓動が忙しなくなる。
今さっきテツヤくんの事でアタフタしたばかりだからちょっと気まずい。
でも彼の眉はもう寄ってなくて、見てると落ち着く微笑みを浮かべている。
さっきの事は水に流してくれたんだろうか。
(あ……そうだ昨日の事謝らないと……)
【うん、いいよ】
「そう言ってくれてよかったです」
ここで私は思い出した。
テツヤくんに謝らなければならない事があったのを。
正直まだ原因はわかってない。
けど自分が気付かない間に迷惑をかけていたり、傷付けてしまっていたかもしれないから……
ここはキチンと言っておくべきだと思って、私はテツヤくんの誘いにのった。
「ではまた後で」
(う、うん!)