第4章 幻の6人目
「落ち着いて下さい」
(あっ……!テツヤくんそれ……)
「テメッ……!!」
ちょっとテツヤくんダメだよ!……と思ったのが素直な意見。
今彼が火神くんにした事はまさかの膝カックン。
ただでさえ頭に血が上っている火神くんにそんな事をしては……きっともっとキレてしまうと思った。
火神くんは暴走しやすい。
これが今の私の彼に関するデータだから。
「ね、ねぇ……」
「??」
(カントク……?)
「黒子くんって最初から居たわよね……」
(はい、居ましたけど……)
この様子からして、どうやらカントクは途中からテツヤくんを見失っていたようだ。
私は昨日でまた昔みたいに慣れたようで、ゲームが始まってからずっとテツヤくんの姿は目で捉えていた。
たった1日……それも数時間で元に戻るなんて、それはそれで凄いと自分でも思う。
「まさか黒子くん……な、なんかとんでもない事が起こってる……?」
(はい、そうですよカントク……!)
カントクがテツヤくんに対して疑問を持ち始めたようだし、やっと彼の凄さを見せる時がやってきたと勝手に自慢気になる私。
この後のプレーに関して少しだけ指示をしてみる事にした私は、急いで紙とペンを取り出して言葉を書きなぐった。
【テツヤくんにパスをしてみてください】と。
「えっ?黒子くんにパス?!で、でも……」
(お願いします……!ねっ!テツヤくん!)
「はい、そうしてくれると助かります」
「わ、わかったわ」
さあいよいよだ。
もう火神くんに「バスケ辞めた方がいいぜ」なんて言わせない。
本当に凄いんだ、テツヤくんのプレースタイルは。
帝光中幻の6人目は決して幻なんかじゃない。
ちゃんとここに実在する。