第3章 黒子は僕です。
黒子side
さんと久しぶりに過ごす時間はとても充実していた。
中学の頃と比べたら大人っぽくなっているけど、性格は全然変わらなくて安心する。
優しくて、照れ屋で……
でもちょっと意地っ張りで、泣き虫。
一緒に送った中学3年間で僕は彼女に惹かれ、そして守りたいと思った。
こんな感情は初めてで、最初はとても戸惑ったけど……側にいればいるほど想いは確かなものとなった。
それは……今でも変わらない。
(ねぇ……)
「どうかしましたか?」
【おかわりしてきてもいい……?】
「くすっ、いいですよ」
(やったぁ……!)
コロコロと変わる表情も、色々と見せてくれる仕草も……眺めていると心が温かくなる。
僕はこの気持ちを大事にしたい。
さんの事が大切だから、下手に伝えて困らせたくない。
だからずっと……想いは胸に秘めたまま。
「またバニラ味ですか?」
(うん……!)
……いつ伝えられるだろう。
いつになったらこの気持ちをキミに伝えられるだろう。
まだキミは僕に恋心を持っていない。
たとえドキドキしても、それは恋からくるものではない事はわかってる。
さんは自分の恋愛に鈍感だ。
他人の恋模様は直ぐわかるのに、自分の事になるとサッパリな所がある。
だから強敵で……難しい。
「??」
(何見てるの……?)
「さんの顔です」
「?!」
(もうやめてよっ……)
けどいつか……いつか想いが通じ合ったら、僕は彼女をこの腕で抱きしめたい。
って、久しぶりに会ったというのに……ここまで思ってしまう自分はかなり重症。
そんな僕の気も知らないで、彼女は相変わらず美味しそうにバニラシェイクを飲んでいる。
(道のりは長そうです……)
恋は楽しくて素敵なものだけど……
時には辛くて苦しいものだ。