第9章 ここにいる理由③(黒尾&孤爪)
時計を見て、早川は口を開く。
「今日は研磨は遅いんだっけ?」
「ああ、会社の飲み会だってさ。」
「へー。研磨も飲み会なんて行くんだ。意外。」
「たまーーーーにな。でも大抵途中で逃げてくるみたいで、9時前には帰ってくる。」
「はやいね。研磨らしいなあ。」
二人は会話しながらテーブルに皿を並べた。
「クロは家でもお酒飲むの?」
「時々なー。今夜はナギの退職祝いってことで飲んどくか。
お前ももう飲めるだろ?」
「うん。少しなら。甘いのある?」
「おう。あるある。」
二人は缶ビールとチューハイで乾杯をした。
「クロは料理どこで覚えたの?」
「ほとんど適当だけど。学生の時居酒屋でバイトしてたからそこが大きいかな。」
「あー、居酒屋バイト似合うねクロ。私もやってたよー。一瞬でやめたけど。」
「お前なあ、仕事選ぶの下手すぎだろ。どうして向いてないものばっかり選ぶかね。」
「ひどいなあ。研磨は?バイトしてなかったの?」
「あいつは、学生の時からパソコン関係のバイトしてたなあ。」
「研磨はブレないねえ。見習いたい。」
食事をしながら会話は弾み、お酒も進んだ。
「クロ、ちょっと顔赤いよ。大丈夫?」
「これくらいは全然平気。お前は全然赤くならねえな。実は強い?」
「赤くならないけど、酔うよ。強くもない。
だんだん焦点が合わなくなってきた。」
そう言って早川は目を擦った。
「マジか。もうそのくらいにしとけ。水もってきてやる。」
黒尾が立ち上がってキッチンに向かったとき、ソファの上に置いてあった黒尾のスマホが鳴った。
早川が歩いて行ってそれを手にする。
「クロー、電話だよ。研磨から。」
「おー、ちょっと出てくれ。」
早川は頷いて画面をフリックして通話画面にする。