第9章 ここにいる理由③(黒尾&孤爪)
「これで気が済んだ?」
「うん。すっきりした。」
パンパンになったゴミ袋をアパートのダストボックスに捨てて、二人は一息ついた。
「じゃあもう戻ろう。俺疲れた。」
「うん。付き合ってくれてありがとうね。
鍵かけてくるからちょっと待ってて。」
彼女は背を向けてアパートの階段を上って行った。
その隙に孤爪は先ほどのゴミ袋から小さなジュエリーボックスを探し出して、
中に納まっていたキラリと光る指輪を取り出した。
(なんとなく、これは取っておいたほうが良い、ような気がする。)
さっき彼女がこれを見つめて話していたことを思い出しながら、
孤爪はそれをポケットに押し込んだ。