第9章 ここにいる理由③(黒尾&孤爪)
「いただきまーす。」
「どうぞ。」
黒尾はぱくぱくとカレーを口に運びながら感想を言う。
「うまいうまい。上出来だよ。」
「……無理しなくていいよ。料理苦手なのは自覚してるから。」
「いや、ホント。ちゃんとおいしいって。
そもそも研磨が黙って食べるってことはそれだけでおいしいってことだし。自信持っていいぞ。」
早川の目の前で、黒尾は大盛りのカレーをどんどん平らげていった。
(飲んだ後で、お腹なんて空いてないはずなのに。優しいんだから。)
その姿を見て、早川は嬉しいような申し訳ないような気分になる。
「そういえば、小学生の時バレンタインにナギが作ってくれたお菓子おいしかったよな。」
「え、何の話?」
「あと、体育は苦手だったけど縄跳びは得意だったし、
マイペースだから授業についていけないときもあったけど、
ちゃんと自分で勉強して成績は保ってたし、努力だってできる。
顔は地味だけど、化粧するとまあまあキレイになるし、笑うとかわいい。」
カレーを食べながら、黒尾は言葉を繋ぐ。
「クロ?なに、どうしたの急に。」
早川は戸惑っているが、孤爪は黙って聞いていた。
「だからさ、もうこの前みたいなこと言うなよ。
ナギは全然ダメな奴なんかじゃない。
俺も研磨もナギのこと好きだからさ。自信持てよ。」
「……ありがとう。」
恥ずかしそうにそう呟いた早川を見て、孤爪は改めて思う。
(俺じゃあんなふうにナギを励ませない。
やっぱりクロじゃなきゃだめなんだ。)