第8章 ここにいる理由②(黒尾&孤爪)
黒尾が早川を連れて帰ってくると、孤爪は玄関まで様子を見に来た。
「おかえり。ナギ大丈夫?」
「うん。ごめんね迷惑かけて。」
顔色は悪いながらも、しっかりと自力で歩いている姿にほっとする。
「シャワー浴びるか?もう寝るか?」
黒尾にそう聞かれて、彼女は靴を脱ぎながら答える。
「シャワー浴びたい……借りてもいい?」
彼女がシャワーを浴びている間、黒尾は孤爪に状況を説明しながら、今後のことを相談した。
「ホントに大丈夫なの?」
「ああ。胃炎だってさ。熱もないし他は至って元気。
ただ、数日はまともに食べれないかもって。」
「そうなんだ……。」
「こう言っちゃなんだが、いい口実ができたよ。
少なくとも今週いっぱいは休ませて、あいつの荷物もある程度こっちに移したいな。」
黒尾の言葉に、孤爪も頷く。
「うん。俺ちょうど明日から有休だから面倒みれるよ。」
「とにかくゆっくり休ませなきゃな。あとこれ、今日の病院の診察券。
一応お前に預けとく。水も飲めないようだったら連れて行ってやって。
明日から俺ちょっと仕事で夜遅いからさ。頼んだぞ。」
「わかった。」
黒尾は孤爪の頭をなでて笑った。それから少しいじわるっぽい顔をしてこう付け加えた。
「ナギがいると研磨は少ししっかりするな。」
「変なこと言わないでよ。
ナギが弱すぎるからそう見えるだけでしょ。
……ナギに貸す服とってくる。」
孤爪はそう言って、逃げるように自室へ入って行った。