第8章 ここにいる理由②(黒尾&孤爪)
「久しぶりに再会した感想は?」
「なんかヒラヒラふわふわしてて気持ち悪い。
俺の知ってるナギじゃない。」
率直に答える孤爪に、黒尾は苦笑いする。
「俺も最初はそう思ったよ。でも中身はそんなに変わってないから安心しろ。」
「……。」
孤爪はキッチンに戻ってきて、黒尾が切っているトマトをつまみ食いする。
「あと、少しだけあのころの研磨に似てる。
ここに住む前の仕事でつぶされそうだった時の……。」
「その話やめてって言った。」
触れられたくない話題を出されて、孤爪はそれを遮った。
「ああ、そうだったな。ごめんごめん。
だからさ、お前は自分の力と、ここと、あとほんのちょっとだけ俺の力?のおかげで乗り越えられたけど、
今のナギには何もないからさ、
ちょっと助けてあげたいなって思ったわけ。ダメか?」
「別にダメじゃない。昨日の話聞いたときは俺も心配したし。」
トマトをもう一つつまんで孤爪はぼそりと声を出した。
「ありがとな。研磨。あ、じゃあさっそくナギに服貸してやってくんない?
俺のだと大きすぎると思うんだ。」
「えー……めんどくさい。」
「そう言うなって。ほら、何でも良いから。」
不満そうな孤爪をなだめて、黒尾は彼を促す。