第7章 ここにいる理由①(黒尾&孤爪)
「仕事大変?」
自然に話の内容は仕事のことになる。
「そうでもねえよ。6年もたてばもう慣れたし。みんないい人ばっかりだし。」
「そっかあ。クロみんなに慕われてそうだったもんね。よかったよかった。」
早川はしみじみと頷きながらグラスに口をつけた。
「お前は?営業なんだろ?」
「うん。私はクロとちがって全然だめ。成績も悪いし、
だから先輩とも同僚とも微妙。
今日の合コンは人数合わせ呼ばれただけ。」
そう言って寂しそうに笑った。
「ナギが営業なんて意外だったな。
お前、人見知り激しかったし、俺と研磨以外と遊んでるとこ見たことなかったし。」
「ほんとだよね。自分でも営業向いてないと思う。人としゃべるのとか苦手だし。」
「合コンでは人気なのにな。……あ、ごめん。変な意味じゃなくて。」
思わず口から出た言葉に、黒尾は失言だったと謝る。
「ううん。別に合コンだって人気なわけじゃないよ。」
「そうか?さっきの小悪魔演技、すごかったけど。」
黒尾がからかうように言う。
「もうアラサーだよ。いい加減痛いよね。」
「自覚してたのか。」
「クロ結構厳しい。そりゃね、自覚してるよ。
仕事が全然ダメで、誰からも相手にされなくなって、パステルカラーの服を着て、かわいく振舞って、媚び打ってることでしか見てもらえなくて。
それももう歳を重ねるごとに厳しくなってて。やばいよねえ。」