第7章 ここにいる理由①(黒尾&孤爪)
「俺の知ってる店で良い?」
「うん。おまかせします。」
二人は駅から少し離れた、住宅街に差し掛かったところの小さな飲み屋に入った。
「落ち着いてていいね。」
カウンターに並んで座って、早川が感想を述べる。
「だろ。ごはんもおいしい。時々研磨と来るんだけどさ。」
「研磨!?え、研磨元気?今も仲良いの?」
早川はもう一人の幼馴染の名前を聞いて、目を輝かせて黒尾に詰め寄る。
「おう、元気だぞー。ていうか、俺たち今一緒に住んでるし。ルームシェアってやつ。」
「えー!?そうなんだー。うわあ、すごい。いいなあ。
研磨懐かしい。会いたいなあ。」
「今度うちに遊びに来いよ。研磨も喜ぶだろうし。」
メニューを眺めながら、黒尾は彼女に「なに飲む?」と聞いた。
「梅酒ある?」
「あるある。これ、研磨がおいしいって言ってた。
あいつ男のくせに甘いのしか飲まないから。」
「あー、研磨っぽいなあ。じゃあそれにする。」
「おっけー。」
それから二人は、本日二度目の乾杯をした。