第7章 ここにいる理由①(黒尾&孤爪)
「2次会どうする?」
店を出て、繁華街の路上でみんな相談を始める。
「あ、カラオケならすぐそこにあるんで。俺部屋押さえてきますよ。」
「さすが黒尾。頼むわ。」
黒尾は一人、みんなの輪から外れて歩き出す。
「クロ!」
数メートル進んだところで呼び止められて、黒尾は振り返る。
「私、もう帰るから。人数から抜いてもらっていい?」
早川はそう言って駅の方を指差した。
「ああ。分かった。」
黒尾が頷くと、彼女はにこりと笑ってこう言った。
「今日はありがとう。ひさしぶりにクロに会えてうれしかった。
大人になっててびっくりした。じゃあね。体に気を付けてお仕事がんばって。」
手を振って去ろうとする彼女を黒尾はとっさに呼び止めた。
「ナギ」
「なに?」
「そこの道、曲がったところにドトールあるから。そこで待ってろ。送ってく。」
「平気だよ。それにクロがいないとみんな寂しがるから。」
「いいんだよ。どうせ適当に帰るつもりだったし。
せっかく再会できたのに、ほとんどしゃべれなかったから、少しナギと話したい。」
「クロ、酔ってるの?」
少し訝しがって早川が聞く。
「かもな。じゃあ、ドトールな。30分以内に行くから。」
「……分かった。」
そう頷いた早川の表情は、少しだけ昔の彼女と重なった。