第1章 真夏の君 (影山 飛雄)
再び歩きながら、凪沙は話し出した。
「さっきの話、なにを迷ってるの?」
柔らかい口調で凪沙が俺に聞く。
昔からこうだ。彼女は絶対に俺を問い詰めたり責めたりしない。
だから安心して話してしまおうか。
迷いながら俺は口を開く。
「……推薦、来てるのは東京と仙台の大学なんだ。」
「うん。」
「親は、仙台にしとけって。実家から通ったほうが体調管理とかも、いいだろうしって。
でも俺は、東京に行ってみたい。
俺の知ってるすごい奴ら……木兎さんとか、牛島さんとかも、みんな東京でがんばってるし。
あと、日向も東京行くみたいだし。」
「そうなんだ。」
凪沙は静かに相槌を打つ。
「でも実際、俺はバレー以外のことはほんとダメだから。ちゃんとやっていけるかなとか。」
「うん。」
短く頷いて凪沙はやわらかな笑顔を向けた。