第6章 星をさがしに(国見&金田一)
「はあ、はあ……お前、昔から、この時だけは本気だよな……。」
「うるせ……。」
俺は地面にへたり込んで声を絞り出す。
心臓はうるさいし呼吸が苦しい。
「練習も、毎日このくらいがんばれっつーの……。」
「それはむり……。」
金田一も膝に手をついて呼吸を整えている。
俺は階段を上ってくる凪沙に目を向ける。
「あーあ、嬉しそうに笑っちゃって。」
金田一の言葉に、俺は思わず口元を押える。
でも彼が言ったのは俺のことじゃなかったらしい。
「凪沙、変わんねえよな。」
「そうだな。ちょっと子供っぽすぎかな。」
「国見はさ……。」
金田一が何か言いかけて、俺はそちらを向く。
「いや、やっぱいい。なんでもねえよ……。」
「気持ち悪い奴。」
歯切れの悪い金田一に俺は悪態をついた。
でも、なんとなくこいつの言おうとしたことは分かる。
俺の勘が正しければ、金田一は凪沙のことが好きだ。
なのに何故か遠慮していて、俺はそんなこいつの優しさに付け込んでいるんだ。
「おまたせー。二人とも速すぎ。次から15秒かなあ。」
ようやく到着して凪沙はそう言って俺たちを見上げた。
階段を登れば、そこは広い芝生の広場だ。
街灯もなく、星を見るには絶好の場所。俺たちだけの天体観測所だ。
「ゆうちゃん、荷物からビニールシート出して。」
凪沙に頼まれて、金田一と二人で芝生に2畳ほどの広さのそれを広げる。
その上に凪沙が靴を脱いで座る。荷物から毛布を取り出して敷き詰める。
「おー、準備良いな。凪沙。」
「えへへ。ママがあったかいココアも持たせてくれたよ。」
そう言って水筒を掲げて見せた。