第5章 君は僕と会わないほうがよかったのかな(二口 堅治)
「うわ、東北さむ……。」
電車を降りて、俺は思わず上着のボタンを閉めた。
携帯を取り出して、実家に電話する。
「え、堅治もう着いたの?
おとうさーん!堅治、駅まで迎えに行って!!え!?なに!?お酒飲んじゃったの?
なにしてんのまだ4時よ!まったくもー。」
「分かったよ歩いてくからいいよ。
俺の分もビール冷やしとけってクソジジイに言っといて。」
電話を切って、俺はため息をついた。
久しぶりに地元を歩くのも悪くないかななんて、
ガラにもないこと思っていると俺も歳とったなーとしみじみする。
駅や町はあちこち新しくなっていて雰囲気も少し変わっている。
「あ、このへんか……。」
凪沙の通っていた高校の近くを通る。確か彼女の家もこの辺だったはずだ。
あの後、彼女が本当に実家に戻ったのかどうかは知らない。
でもなんとなく、ここに来たらもしかしたら彼女に会ってしまうような気がして、俺は正直怖かった。
もしかしたら、結局東京で就職したかもしれない。
そう心のどこかで期待しながら俺は今日まで来てしまったのだ。
元々共通の友人もほとんどいなかったので近況を知る由もない。