第5章 君は僕と会わないほうがよかったのかな(二口 堅治)
でも、俺たちはその頃から喧嘩が増えた。
些細なことで怒って、言い争って、傷つけあった。
今にして思えば、お互い不安だったんだと思う。不安だったから
「こんなひどいことをしてもこいつは自分から離れない」
っていう確認がしたかったんだ。
子供だった。
最後は電話だった。
その日も何かがきっかけで喧嘩をしていた。
「じゃあなに、別れるのか。」
いつもの台詞だった。どうせ凪沙は別れるつもりなんてない。
俺はそう思い込んでいた。
でも凪沙は、電話の向こうで早口にこう言った。
「私だって、もう別れるしかないと思ってるよ。」
それから、嗚咽が聞こえてきた。
ああ、本当に終わるんだなと思った。
その後も電話であれこれ話したはずだけれど、何も覚えていない。
ただ、この電話の終了と同時に俺たちの関係も終わるんだな
ということだけは深く理解していた。