第5章 君は僕と会わないほうがよかったのかな(二口 堅治)
高校を卒業して、俺は就職した。
工業高校では、半分以上は就職組だった。
別に珍しいことでもないし、
家がとんでもなく貧乏だとかいう特別な理由があったわけでもない。
でも、凪沙にはかなり珍しがられた。
大学行かないの?
専門学校は?
高卒でやっていけるの?
凪沙にとっては、進学するということが普通の感覚だったのだろう。
結局、俺は高校卒業と同時に東京で就職した。
凪沙は東京の大学に進学した。
俺たちは学生と社会人になってからも、恋人同士としての付き合いを続けた。
凪沙はどんどんキレイになっていったし、東京での生活を満喫しているようだった。
俺も、慣れないながら仕事は充実していたし、やっぱり都会は楽しかった。
なんとなくだけれど、俺の中で「結婚」の二文字が具体的なものとして浮かぶようになってきたのもその頃だ。
凪沙が卒業したら一緒に住んで、
それから何年かたったら結婚できたらいいな、くらいのことは思っていた。