第5章 君は僕と会わないほうがよかったのかな(二口 堅治)
俺と凪沙は高校の頃から付き合っていた。
きっかけは、バレーの試合。友達の応援に来ていた凪沙が、
たまたま試合で俺を見つけて一目惚れしたそうだ。
背が高くて、顔もまあ悪くない。
我ながらそこそこイケてる自覚はあったものの、
工業高校で周りが男だらけだったため、実際にそういう場面になると完全に焦った。
焦ったまま半ば流されるように彼女と付き合い始めた。
凪沙は女子校に通うお嬢様だった。
お嬢様って言うと凪沙はよく怒っていたけど。
少しわがままで、かわいいものが好きで、
犬を飼っていて、両親のことをパパママと呼ぶ。
それだけで俺から見たら充分お嬢様だった。
時々ケンカもしたけど、俺の部活優先の生活もなんだかんだで許してくれたし、結構仲良くやっていた。
なにより、一緒にいて楽しかった。
凪沙もそう思ってくれていたはずだ。