第4章 37.9度(赤葦 京治)
木葉が出て行ってから、早川はベッドで横になる赤葦に近付く。
「京治、大丈夫?苦しい?」
そうささやくと、小さく唸ってから目を開けた。
「早川さん……うつりますから、帰ってください……。」
「あ、通常の京治だ……。」
「……なんすかそれ。」
赤葦は苦しそうに顔を早川の方に向ける。
「さっきちょっとおかしかったから。覚えてない?」
そう言って火照った赤葦の頬に手をすべらせると、
つめたくて気持ちいいのか、彼はほっとした表情で目を閉じた。
「あー。なんとなく……。すみません。」
「ん。いいよ。寝てて。木葉があとで薬持ってきてくれるから、
それまでに何か食べようね。キッチン借りるよ?」
そう言って頬に乗せた手を離そうとしたら、赤葦がそれを掴んだ。
「なんですぐ木葉さんなんですか。」
「え?」
熱のせいではっきりとしない思考で、整理のつかないまま言葉がこぼれる。
「ほんと木葉さんと仲良いですよね。
分かってますよクラスメイトだからっていうのは。
でも俺は時々不安になるんですよ。
早川さんは俺じゃなくて木葉さんと一緒にいたほうが楽しいんじゃないかとか、木葉さんの方が早川さんのこと笑わせてるなとか。
俺、むちゃくちゃ好きなんですからね早川さんのこと。
ていうか俺何言ってんですかね。
あーもうほんとかっこ悪い……。」
「京治……。」
早川に名前を呼ばれて、赤葦ははっと我に返る。