第4章 37.9度(赤葦 京治)
「……あーすいません。
なんかやっぱり俺今日おかしいです。忘れてください。」
「ねえ、京治聞いて。」
そう言って早川は赤葦の目をまっすぐに見つめた。
「私、京治のことすごく好きなんだよ。
初めて京治を見たのは木葉と一緒にいるところだったから、
バレー部の人なんだなって思って、木葉に京治のことたくさん教えてもらって、
そしたらどんどん好きになって、話してみたいって言ったら、木葉が紹介してくれたんだよ。
だから今京治と付き合えてるのはあいつのおかげだから、
木葉にはもちろん感謝してるけど、
でも私が好きで好きでたまらないのは、京治だけだよ。」
それから早川はそっとキスをした。いつもより高い赤葦の体温を感じてから、静かに離す。
「……うつりますよ。」
「平気。」
早川がふふっと笑うと、赤葦は少し恥ずかしそうに目を逸らした。
「私だって不安だからね。京治人気あるし。
マネージャーとも仲良いし。」
「……何言ってんすか。さっき散々ぐだぐだとかっこ悪い姿晒しながら、どんだけ早川さんのことが好きなのか言いましたよね俺。
それでどの口が不安だなんていうんですか。」
「敬語やめて凪沙って呼んでほしい。」
「は?」
「嫌だったらいい。無理させたくないし。」
少しだけ考えてから、赤葦は口を開いた。
「まずは、二人の時だったら……でもいい?」
早川は笑顔で頷いた。
「うん。じゃあ、とりあえずお水持ってくるね。
汗いっぱいかいたから飲まないと。」
そう言って早川は今度こそ立ち上がった。
すると赤葦が、遠慮がちに声を出した。
「ありがとう……凪沙。」
そのあと、薬を持って到着した木葉に、
二人寄り添って眠る姿を目撃され写真まで撮られ、
散々からかわれたのはまた別のお話。
「37.9度」Fin.