第4章 37.9度(赤葦 京治)
「しかし、こいつがこんなになるの初めて見たな。」
フラフラの赤葦を支えて歩きながら、木葉が言う。
「だよね。どんだけ我慢してたんだろ。」
早川が赤葦と自分の荷物を抱えてついて歩く。
「木葉、ありがとね。練習抜けさせちゃってごめん。」
赤葦がぼうっとしながら口をはさんだ。
「だから、俺は大丈夫ですって。木葉さんはやく戻ってください。
二人も練習休んだら木兎さんがしょぼくれるかもしれませんし……。」
「あー、はいはい。病人は大人しくしててね。」
木葉は軽く受け流して歩を進める。
「だいたい、なんなんですか。二人とも。」
今度は急に不機嫌な口調になる。
「早川さんと木葉さん、どうしてそんなに仲良いんですか。
早川さんと付き合ってるのは俺なんですけど。
ねえ聞いてます?」
「なにお前熱で頭おかしくなってる?めんどくさいよ。」
木葉はため息交じりに赤葦の背中を叩く。
「ほら、もうすぐ家つくから。今日はもう何も考えないで休め。」
「そうだよ。疲れとかストレスとかたまってるんだよきっと。
京治、家にお母さんか誰かいる?」
早川も心配そうに声をかける。
「あー、そう言えば昨日から誰もいないんすよね。
父親の単身赴任先に母親が会いに行っていて。時々あるんですよ。
息子のこと放置して夫婦水入らずっていうんですか?
そういう家なんです。心配しないでください。
いつも一人でなんとかやってますから。」
赤葦は熱のせいで饒舌になっているのか、
べらべらとしゃべりながら何が楽しいのか笑い出した。