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【ハイキュー】短編中編つめあわせ

第3章 東峰、部活やめるってよ。(菅原 孝支)


「先輩。すいません、チューナー音楽室に忘れてきちゃって……。」

後輩がやってきて私に声をかける。

「あ、いいよ。じゃあbの音ね。せーの……。」

いつものように私がチューニングの指示を出す。

「OK。体育館はここより少しあったかいから、
高くならないように気を付けてね。」

「はい。ありがとうございました。」

彼女はお礼を言って戻って行った。

「はー、すげーなに今の。」

様子を見ていたらしい菅原君が驚いたように声を出す。

「チューニング。楽器の音の微調整かな。」

「俺、リコーダーしか吹いたことないけど、
そういうのとは違うもん?」

「ちょっと違うかなー……。」

私はクスリと笑いながら答える。
少し得意になって、こう続けた。

「普通はチューナーっていう機械を使ってやるんだけど、
私は絶対音感があるから、耳で聞いて合わせられるの。」

「おおー絶対音感!なんか聞いたことある。
すごいやつだよなそれ。」

「普段は何の役にも立たないし、音がなんでもドレミに聞こえるから、少し疲れるけどね。」

私は唯一の特技を披露できて、得意げに笑った。

「その楽器は?なんていうの?」

私の持っているそれを指差して彼は聞いた。

「これはクラリネット。高音を出す楽器で……」

「あぶない!!」

突然、菅原君が叫んで、私の耳元でバシ!
と何かが激しくぶつかるような音がした。

一瞬何があったのか分からなかった。コロコロとバレーボールがひとつ転がって行った。

「大丈夫?」

腕をこちらに伸ばした菅原君が私の顔を覗き込んでいた。

誰かが打ったボールが私めがけて飛んできて、それをとっさに彼が止めてくれたのだ。

私は驚きで声が出ず、コクコクと何度も頷いた。

すると彼はほっと息をつくと私から離れた。

「こら田中!人たくさんいるんだから気をつけろ!」

「すいません!!」

田中と呼ばれた男子生徒は走ってきて私に何度も謝った。

「大丈夫だから……気にしないで。」

私は笑って答えたが、頭の中はすうっと冷静になってるのを感じた。



私、どうかしてたかも。



そんな思考が膨らんでいくのを感じた。
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