第3章 東峰、部活やめるってよ。(菅原 孝支)
翌日から、私は校内で菅原君を見つけたら一言でも声をかけるようにした。
「おはよう」
「おつかれ」
彼は私の言葉に常に笑顔で答えてくれた。
少しずつ、距離が縮まりますように……。
その日は、体育館でのリハーサルのため、
バレー部から30分だけ体育館を使わせてもらう。
その間バレー部は外での練習メニューにしてくれるそうだ。
「チューニングは外でやって、体育館入ったらすぐに通しはじめるからね。」
藍ちゃんの指示でみんながぞろぞろと移動する。
「あ、澤村君。体育館貸してくれてありがとう。うるさくなっちゃうけどごめんね」
「おう。気にすんな。うちもうるさいの多いし、お互い様だから。」
部長同士であいさつをしている。
藍ちゃんはいつも澤村君かっこいいってキャッキャしているのに、
こういうときは冷静に話しているからすごいなあと思う。
すぐに舞い上がってしまう私には無理だ。
私は菅原君の姿を見つけて、声をかける。
「菅原君、今日はありがとう。なるべく早く終わらせるから。」
「ああ、いいっていいって。俺たちも演奏楽しみにしてるから。」
爽やかに笑う彼にはいつまでたってもドキドキしっぱなしだ。