第3章 東峰、部活やめるってよ。(菅原 孝支)
「で?なんなのよ。一体。」
練習の合間に藍ちゃんは声をかけてくれた。
「菅原君が素敵すぎて生きているのが辛いです。」
「そうかがんばれ。」
藍ちゃんは冷たくそう言い放った。
「それだけ!?」
「だって意味わかんないもん。
聞いてほしいなら分かるように話してよ。」
私は先ほどの出来事をこと細かく説明した。
「で、その絆創膏は使わずに大事に持っていると。」
私は頷いてポケットからそれを取り出してみせた。
「使えるわけないじゃん!
絆創膏くらい自分で持ってるし!ていうかいざとなったら保健室にもらいに行くし!
これは、記念ていうか……ああ私何言ってんのおかしいよね?
むりほんとむり。素敵すぎて死にそう。」
「生きろ。」
「うん。がんばる。」
私は力なくため息をついた。
「こうなるのが嫌だったからさ、
遠くで見てるだけで良かったのに……。」
「泣くなー。まだ後半合奏残ってるから。」
藍ちゃんは現実を突きつける。
「分かってるよー。ねえ、私、期待してもいいのかな?」
藍ちゃんはうーんと唸ってから口を開く。
「菅原君が優しいのは誰にでもだと思うよ。
ナギが特別ってわけじゃあないと思う。」
「ですよね。」
「でも、菅原君は彼女いないらしいじゃん。
だったらさ、可能性はゼロじゃないと思うよ。
長い目でみて、これから少しずつ仲良くなって、距離を縮めて告白したらうまくいく……かもしれないよ。わかんないけど。」
「……うん。そうかな。」
藍ちゃんの言葉に私は少しだけ希望を持つ。
「そうだよ。だから元気出して。」
私は頷いて顔を上げた。
「私、がんばってみる。」