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【ハイキュー】短編中編つめあわせ

第3章 東峰、部活やめるってよ。(菅原 孝支)


顔をあげると、心臓が飛び出るかと思うほど驚いた。

菅原君が、私に向かって拾った譜面を差し出している。

「う、うん。大丈夫。ありがとう……。」

受け取る私の手は震えた。

どうしようどうしよう。天国から地獄!?ちがう逆だ、地獄から天国!

軽くパニック。

彼は当然のように残りの譜面を拾うのを手伝ってくれる。

良い人だなあ。

「これ、入学式でやるやつ?」

何気なく聞かれて、私の心臓はうるさいほどに脈打つ。

「あ、うん。そうだよ。でもどうしてわかったの?」

「自分でクラブ会で言ってたべ。」

そう言って彼はおかしそうに笑った。

ああもう、素敵すぎる。

あんな茶番会議、聞いててくれる人なんていないと思ってたのに。

「ちゃんと聞いてるんだね……。」

「え?だって俺、実は吹奏楽部のファンなんだぜ。
体育祭の演奏とかさ、グワって盛り上がってすげえじゃん。」

至近距離で笑う彼に私は顔が赤くなるのを感じる。

この人、私を殺す気か……。

「しっかし、すげえよなあ。
これがあの演奏の元になるんだべ?俺なんて何書いてあるかさっぱり……。」

菅原君は拾った譜面を眺めて感心したように唸る。

「慣れれば、誰でも読めるよ。」

そんな彼がかわいくて、私は少し笑ってしまう。

「私は、バレー部の人がボールバシバシやってるほうがずっとすごいと思う。
あんなの腕もげそう。」

「もげないもげない。大げさ。」

そう言って彼は笑った。

良く笑う人だなあ。

心臓はバクバクだったけど、
彼の笑顔を近くで見られることの感動をかみしめるくらいには冷静さを取り戻した。

「これで全部かな。はい。」

「あ、ありがとう……いたっ」

動揺していたせいで、彼の手から譜面を受け取る際に指を切ってしまった。

ああもう、私ってほんとどんくさい……。

「あ、切った?大丈夫か?
痛いんだよなー紙で切ると。ちょっと待って……」

そう言って菅原君はポケットから絆創膏を取り出した。

「あった。はい。よかったら使って。」

「ありがとう……。」

私はそう答えるのがやっとだった。

それを私の手にに持たせると、彼はじゃあ部活がんばって。と言い残して去って行った。
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