第23章 また、近いうちに(白布 賢二郎)
「帰ってきてたんだ」
「さっき着いたとこ」
「夏休みだもんね。いつまでいんの」
「明日の夕方には寮に戻る」
「はや」
一階に着いて、ドアが開く。並んでエントランスを出ると、むわっとした熱気に包まれた。
蝉の鳴き声に負けないように、少し大きな声で話す。
「賢二郎どこいくの」
「コンビニ」
「私も。お昼?」
賢二郎が頷くので、やっぱり!っと思う。
うちも賢二郎の家も共働きだから、こういうことは珍しくなかった。
「ねえ、一緒に食べようよ。子供の時みたいに。賢二郎の部屋で」
「えー。自分の家で食えよ。もう子供じゃないんだから」
「じゃあ賢二郎が私の部屋くる?」
「やだよ汚ねえから」
「汚くないよ」
「ていうかお前の部屋エアコンないじゃん絶対いやだ」
「だから賢二郎の部屋にしようよ」
「却下」
「なんでよ」
なんだかんだと言い合いながら、コンビニを目指す。歩道のない道を、賢二郎は子どもの時と同じように車道側を歩いてくれる。
口は悪いけど、こういうところは昔から優しい奴なんだ。
背が伸びたね、かっこよくなったね、彼女できた?バレー楽しい?
聞きたいことも話したいこともたくさんあるのに、実際に賢二郎が目の前にいると胸がいっぱいで言葉にならない。
代わりに出てくるのは、どうでもいい話題ばかり。
それでも、久しぶりに会えたことが嬉しくて私はドキドキしていた。