第23章 また、近いうちに(白布 賢二郎)
中学までずっと一緒だった賢二郎は、あっさりと私の傍からいなくなった。
成績のことを考えれば、高校は別になるのは仕方ないと覚悟はしていたけど、まさか寮に入ってしまうなんて夢にも思わなかった。
しかも私がそのことを知ったのは受験を終えた後
「1組の白布があの白鳥沢に合格したらしい」
という噂を学校で耳にしたときだった。賢二郎はもともと口数の多いタイプじゃないし、わざわざ私に報告する義務もないのだから当然のことだ。
当然のことなのだけれど、彼の中での私の存在はその程度のものなんだと思い知った。
それから1年4か月。私たちは別の高校で2年生になった。
賢二郎が時々帰ってきているらしいことは母親伝いに知っていた。それでも顔を合わすことはなかったし、私たちは携帯の連絡先も交換していなかった。
コンビニまでやってくると、ガラス扉のところにお祭りのポスターが貼ってあった。
「あ、今日なんだ。神社のお祭り」
「ふーん」
賢二郎は興味なさげだ。
「せっかくだし、夜行ってみようよ。賢二郎が帰ってきてるって言ったら林くんとか三田ちゃんとか喜ぶと思うよ。」
「お祭りって人すごいじゃん。やだよ。」
「でも花火もあがるし」
店内で弁当を選びながらもお祭り行く行かないの会話は終わらない。
こんなチャンスもう一生ないかもしれない。私はちょっと意地になっていた。
「わかったよ、じゃあさ……」
私はぴたりと動きを止めて、彼を見上げる
「お前と二人なら行ってもいいよ」
賢二郎は棚に並ぶ冷やし中華に視線を向けたままぼそりと言った。
「……は?」
「嫌ならいい」
「い、いやじゃないっ、私もふたりで行きたい!」
私の返事を聞いて、賢二郎は漸くこっちを向いた。
「じゃ、早く弁当買って帰るぞ」