第22章 きっかけ(瀬見 英太)
夏休みまで、あと数日となったある日。
テスト期間のため、生徒は早々に帰宅する。さすが県内有数の進学校、なんだかんだで皆優等生だ。
俺は一人、体育館でサーブ練習をしていた。
他の連中もさっきまではいたのだが、みんな引き上げて行ってしまった。
外が薄暗くなった頃に、ふと、人の気配がして出入り口に目を向けると、意外な人物がそこにはいた。
「早川?」
汗を腕で拭いながら、彼女の方へ歩いて行く。
「あ、ごめん。邪魔するつもりはなかったんだけど。電気ついてたから、気になって……。」
「ああ、そうか。テスト期間は部活禁止だもんな。スポ薦組のバレー部は、自主練は黙認されてるんだよ。」
「そうなんだ……。」
「お前こそ、こんな時間まで残ってたのか?」
「図書館で、勉強してた。あそこ涼しいから。」
ああ、そうか。と、窓から明かりが漏れる建物に目を向ける。